2009/08/26

ドイツ、ハーツの魔女達が集う岩

 8月23日

ハルツ登山鉄道には、ブロッケン山に行き多くの旅行者でいっぱいだった。この登山鉄道は、蒸気機関車がいまでも使われていた。旅行者の多くは、この蒸気機関車に乗ることも目的の一つである。

列車は、ゆっくりと森の中をぐんぐんと進む。次第に山を上り始め、1時間40分あまりでブロッケン山に到着する。
山頂には、ロケットのような形をしたレーダー基地と、博物館などの施設が立っていた。
旧東ドイツ時代、ここは 軍の施設だったため立ち入りが禁止されていた。統一ドイツ後、はじめて一般に公開された。登山鉄道の人気も重なり、今ではドイツ国内で最も注目されている観光地になっている。
山頂には、大きな一枚岩がぽつんと置かれている。石には、標高1142mと刻まれていた。
私は、山頂を取り囲んでいる遊歩道を下った。すると、そこには巨石が積まれたような岩場が現れた。
その岩の前には、ドイツ語の案内版には伝説にちなんだ魔女の絵が描かれていた。三人の魔女の姿、二人は箒に乗っている。
 このブロッケン山は、毎年4月30日にドイツじゅうの魔女達がほうきに乗って集まる魔女の集会所とされている。そのことは、ゲーテの「ファウスト」に出てくる饗宴ヴァルプルギスの夜に紹介されている。
 ブロッケン山からヴェルニゲローデに戻り、同じハーツ地方のターレにバスで向かった。
ターレは、魔女伝説の残る山があり、それが石だという。バスは一時間ほどでターレに到着。そこから山の山頂に向かう。山頂へはロープウエイか徒歩は車で行くことができる。
山頂は大きな広場になっていて、駐車場がありレストランやお土産屋があった。この広場は、ヘクセンタンツ広場と呼ばれている。ヘクセンタンツとは、ドイツ語でHexentanzplatzといって、直訳で「魔女が踊る場所」の意味がある。広場の一角に環状列石があった。ここは、魔女が集まって踊ったり騒いだり、悪魔や魔物が集まった場所とされていた。環状列石には、いくつかの魔女と思しき像が置かれ子供たちが石の上で遊んでいた。


ブロッケンの妖怪と呼ばれるブロッケン現象(太陽などの光が背後からさしこみ、影の側にある雲粒や霧粒によって光が錯乱され、見る人の影の周りに、虹と似た光の輪となって現われる大気光学現象)というのがある。
この現象から妖怪や魔女と結びつき、巨石群が魔女伝説と重なったのかもしれない。
ブロッケン山の岩とターレの石が魔女と結びついたのは偶然ではない。キリスト教世界から異端とされる魔女達は、古層の神々(大地母神)が形を変えて現代に甦ったシンボルのようにみえる。

                   ドイツ、ベルリンにて 郡司 拝