12月18日
セドナからフラグスタッフ、ホピの居留地を経て、キャニオン・デ・シェイ国定公園へ向かった。
ビジターセンターで地図をもらい、さっそくキャニオンが見える展望台へ向かった。
いくつかの展望台からキャニオンを見てから、国定公園内で唯一許可なしで渓谷へ降りられるというホワイトハウス遺跡へのトレイルを歩くことにする。巨石に穴を空けて作られたトンネルを潜り、岩場を削って作られた小道をゆっくりと降りてゆく。
二つ目の岩のトンネルを潜ると平地が現れた。ふと、上を見上げると三匹の羊が急な岩の斜面に顔を覗かせていた。
小さな橋を渡り、しばらく歩くと切り立った断崖が現れ、近づくと下方に建物が見えてきた。これがホワイトハウス遺跡だ。ホワイトハウス遺跡は、ナヴァホ族より以前のプエブロの人々(アナサジ・インディアン)によって造られたもので、かつては80部屋があり1040年頃から1275年頃までに使用されたと推定されている。
断崖を見上げ、巨大な岩肌を見ていると異次元にいるような不思議な感覚になった。断崖の下部に見える小さな岩屋の穴に吸い込まれてゆくような錯覚に陥った。かつてプエブロの人々は、この巨岩の断崖を聖なる場所としてとらえ、祭祀空間として利用していたのではないだろうか。
最後に向かったのは、巨大な岩峰スパイダーロックだ。砂岩でできた赤い2つの尖塔が谷底から高さ244mも突き上げている光景は、迫力があり実に美しい。
スパイダーロックは、今でも先住民にとって聖なる岩として崇められているという。スパイダーとは蜘蛛を意味するが、ナヴァホ族(ディネ)の創造主とされている、おばあさん蜘蛛を現わしている。ナヴァホ族は、織物を大切な生業のひとつにする彼らにとって「おばあさん蜘蛛が人々に織物を教えてくれた」という、古くからの神話があるという。
初めての地、アメリカ大陸は実に魅力的で雄大な自然景観が広がっている。まだまだ知らない石の世界がある。
おばあさん蜘蛛の岩神に別れを告げると、二つの岩峰がまるで巨大な夫婦岩に見えてきた。
アメリカ、コロラド州、モアブにて
須田郡司 拝