2010/04/19

THE ROCK TOUR  世界最大の磐座、エアーズ・ロック

 413日から15日にかけてアリス・スプリングス発の三日間のロックツアーに参加する。21人のヨーロッパ、アジアの若者に混じって我々はキングス・キャニオン、ウルル・カタジュタ国立公園の奇岩を巡った。連日、日の出前に起床し,オーストラリア先住民の聖なる岩山をトレッキングで巡る旅は、まさに聖地巡礼のように思えた。そこには、驚くべき岩の世界が広がっていた。


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 日の出と共に出発したミニバスは、約240kmの肯定を4時間あまりで走りキングス・キャニオンへ到着した。ここは、中央オーストラリアで最も壮大な景色といわれる。約6kmものトレイルを歩くと、そこにはチョコレート色の奇岩やレンガを積み重ねたような風景が我々を待っていた。

何万年もかけて雨と風に磨かれた赤茶色の砂岩は、酸化鉄が含まれ、一層大地を赤く演出していた。



 「世界の中心で愛をさけぶ」ラストシーンの舞台にもなったキングス・キャニオンは、多くの日本人観光客が訪れる人気のスポットになっているとか。圧倒的な絶壁がとてもダイナミックな風景を見せてくれる。

その夜は、満天の星に見守られながら寝袋で野宿。南十字星が実に印象的だった。


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 早朝の光の中、ウルル・カタジュタ国立公園へ入園(A25)。

世界最大級の一枚岩エアーズ・ロックは地元アボリジニ(オーストラリア先住民)の人々はウルルと呼ぶ。それは、地球のへそという意味がある。エアーズ・ロックと同じ岩山であるカタ・ジュタ(オルガ山)は、アボリジニの重要な聖地である。また、ここは古来からのアボリジニの痕跡を随所に残す文化的な場所でもある。国立公園はピッティンジャラジャ評議会というアナング族の組織が有していて、オーストラリア政府にリースしている形をとっていた。

最初に、カタジュタ(オルガ山)へ行く。オルガとはアボリジニの言葉で「たくさんの頭」を意味する。

36もの岩のドームがあり、巨大な生命体のように見える。澄んだ水辺から岩を見上げると、巨大な象の姿に見える。エレファント・ロックだ。



風の谷のナウシカは、ここからヒントを得たという。最後に、オルガ岩のビューポイントへ行く。


 昼食を食べ、エアーズ・ロックの周囲を少し散策する。エアーズ・ロックの岩は、実に様々な表情を持っていた。




今でも儀式に使われている、聖なる池。

洞窟状の岩には、いくつもの岩絵が描かかれていた。



この花崗岩の赤い岩は、多くの鉄分を含んでいるため赤く錆びたのだという。

 驚いたことに、途中途中にいくつもの看板が立てられていて、「アボリジニの聖地なので写真を一切禁止する」とある。撮影したものは罰金A5000とあるのだ。

 

 夕食をいただきながらサンセットのエアーズ・ロックを鑑賞する。まさにドリームタイムを感じさせた。



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 早朝、朝食をいただきながらサンライズのエアーズ・ロックを鑑賞する。

その後、エアーズ・ロックの周りを歩く。朝日を浴びた赤い岩肌は、実に不思議な景観を見せてくれる。





岩肌は、実に艶かしくどこか聖地の性地性を感じる。イルカに似た岩と岩絵



 恥ずかしながら、当初、私はエアーズ・ロックに登ろうと思っていた。それは、岩上の写真を撮りたいという好奇心からだ。しかし、エアーズ・ロックの周りを歩けば歩くほどこの巨大な岩が神聖な場所であり、日本の磐座と同じように思えてきたのだ。その上、岩の入口には「エアーズ・ロックは、アボリジニにとって神聖な場所で、特別な司祭以外登らないので、登らないで欲しい」との看板まであるのだ。パンフレットに寄れば、エアーズ・ロックの登山でこれまで35人以上が事故で命を落としていることから、これ以上、犠牲をださないためにも登らないでくれとかかれてあった。20097月にオーストラリア政府は201110月に入山禁止の措置を取る計画を行なっていることが明らかになった。しかし、201018日に観光業界に配慮し、登山を当面認めることを発表したという。いったい、何のための世界遺産なのか。聖なる岩山に鉄杭を打ち、登山道にしている行為自体が先住民の聖地を汚す行為に他ならない。一刻も早く、登山を禁止すべきだと思う。

その日、強風のため登山は禁止された。


 帰りがけ、ガイド兼ドライバーのサムは急ブレーキを踏んでバスを停めた。彼は道路でトーニー・デビル (thorny devil)と呼ばれるトゲトゲしたトカゲを見つけたのだ。

molochという別名を持つ珍しいトカゲは無毒で、敵から身を守るため、肌の色を変えることが出来るという


 「エアーズ・ロックは世界最大の磐座だ」、ロック・ツアーは、私にそんなことを教えてくれた。


                      アリス・スプリングスにて

                                 郡司 拝