2月5日
我々はクエンカの北にあるインカピルカ遺跡へ向かった。
標高2500mあまりのクエンカの町からバスはアンデス山中を上り2時間半あまりでインカピカル遺跡に到着する。標高は3,150m。
インガピルカとは「インカの壁」を意味し、スペイン人が来るまではこのあたり一帯はインカ帝国の支配下にあった。インカ帝国の首都はクスコにあったが、ここはインカ帝国の北部の拠点として作られたという。インガピルカ遺跡は、クスコと同じ石造建築ででき町を見下ろす高台に作られていた。
遺跡の中に入ると、区画された住居跡があり、外れに奇妙な石が置かれていた。石にはいくつもの窪みがある。
その中で大きな石には28個の窪みがあり、暦として使われていたという。遺跡の奥には宗教的な儀式に使われたと思われる「太陽の神殿」が建っていた。その周りは楕円状に石が積まれかなり精巧にできている。
門や石室を見ると、ペルーのマチュピィチュ遺跡とも似ている。
「太陽の神殿」は崖を利用して建てられていた。
崖から見下ろすと牧場が広がっていて、さらに奥に山が見える。
周囲では、牛や羊が草を食み、どこかチベット高原を思い起こさせる。
私は、人面岩を見るためインカピルカ遺跡の崖を下った。牧場をさらに下り、そこから坂道を上って丘の上に出る。丘にはいくつかの農家があり、その横の山道を少し下がると、いきなり人面岩が現れた。確かに人の横顔そのものだ。高さ10mくらいの自然の岩は、まさにインカの顔で、インディヘナの長老といった印象を持った。近くで農作業をしていたおじさんと見比べると、確かに似ている。人面岩は、アンデス山脈を静かに見つめてた。
帰りがけ、遺跡の下に放牧されている十数頭のリャマを見かけた。その中で、一頭だけ群れを離れて遺跡を歩いているリャマがいた。その姿は、どこかのインカピルカの守り神のように思えた。
ペルー、カハマルカにて
郡司 拝