1月31日
サン・アグスティンをお昼前に出て、ポパヤンに戻ったのが午後6時を過ぎていた。そのまま夜行バスでエクアドルとの国境の町、イピアレスへ向かうことにする。バスターミナルで夕食を食べ、しばらく休んでから深夜、11時発のバスに乗った。
翌、2月1日朝7時、イピアレスに到着する。かなり寒い。それもそのはず、この町は標高3000m近くもあり、人々はセーターやポンチョを着ていてまさに冬仕度だった。
イピアレスに来たのは、聖母マリアが出現した洞窟教会が近くにあることを知ったからだ。その教会は、聖地として多くの巡礼者が訪れているという。
我々は、乗り合いタクシーに乗りイピアレスから7kmほど離れた教会へ向かった。途中、ドライバーが見晴らし台で車を停め谷底を覗くと、渓谷に佇むお城のような建物が見えた。これがサントゥアリオ・デ・ラス・ラハス教会であった。
15分ほどで、タクシーは小さな村に停まった。その村は、キリスト教関連グッズのお土産、レストラン、ホテルなどが立ち並び、まるで門前町のような雰囲気があった。朝早かったため、人は少ない。小雨の降る中、石段を下って行くと、道の岩場にプレートのようなものがたくさん付けられていた。
そこには、たくさんの感謝の文字が刻まれていることが分かった。
やがて、教会が見えてきた。ネオ・ゴシック様式の何とも立派な教会である。
教会の中に入り奥に進むと、祭壇の奥は天然の岩盤がむき出しの状態になっていて、その岩に向かって熱心に祈っている男性がいた。
正面をよく見ると、岩に聖母マリアと幼子イエスが描かかれていた。
教会の奥のドアから通路に出ると、やはり岩がむき出し状態にあり、もともとここが洞窟だったことが分かる。
教会の前の橋を渡り、反対側の丘に上って教会を見下ろすと、谷底からそびえ立つような構造で造られていることがよくわかる。
それにしても、こんな渓谷をまたぐように高さ100mもの高さの教会をよく造ったものだ。
伝説によれば、18世紀半ば、川の上の巨大な岩の上に聖母マリアのイメージが現れたという。やがて、その洞窟の岩を取り囲むように教会の祭壇が建設され、今ではコロンビアやエクアドル人はもとより、世界中からの多くの巡礼者がやってくる聖地になったという。聖母マリア像に向って人々は祈り、多くの奇跡が人々に起きているというのだ。
午前9時、教会のベルを合図にミサが始まった。数家族の方々は司祭の言葉に耳を傾け、熱心に祈りを捧げている。やがて、讃美歌が響き渡った。
時を経て、多くの人々がこのサントゥアリオ・デ・ラス・ラハス教会で敬虔な祈りを捧げてきたのだろう。この洞窟教会は、岩場に貼り付けられた多くのプレートそのものが、奇跡を証明している。
洞窟に出現した聖母像は、まさに岩の持つ自然信仰が形を変えてキリスト教(カソリック)の中に取り込まれた、姿ではないだろうか。
エクアドル、キトにて
郡司 拝