ルアン・パバーンを離れる前日、この街の中心部にある100mほどの小山、プーシーの丘に上った。
この丘の上からはルアン・パバーンの町並みが見渡せ、夕日の絶景地としても知られている。
王宮跡(現:博物館)横の、マーケットからまっすぐで急な石段を上がり入場料20000kip(約250円)を払い、
そこから、一気に階段を上り詰めると身体から汗がにじんできた。
丘の頂上には1804年、アヌルット王によって建立されたタートチョムシー と呼ばれる仏塔があり、その横にはお堂もあった。山頂はわずかなスペースだが、そこには30人ほどの観光客が座っていて、やがて日が沈もうとしている光景を待っているのだ。多くのカップル達はカメラを片手に、まったりとした時の流れで街を眺めていた。
夕日まで、まだ時間があったので私は仏塔を見てから横にあるお堂をお参りすることにする。
裸足で中に入ると、数体の仏像が安置されていて黄金色に輝いていた。
私は仏像に手を合わせてから、お寺の中を観察した。すると、窓から不思議な光景が目に入った。それは、岩の割れ目である。いや、正確に言えば、元々あった岩と、その上に作られた仏塔の隙間が空いていて、割れ目状になっているのだ。
岩と仏塔の隙間は斜めに走り、その下にはお香が供えてあった。割れ目の上に屋根が付けられていることから、この場所には特別な意味があるように思えた。
もしかしたら、このプーシーの丘の山頂の岩は、本来は日本の磐座のように信仰されていたものではないだろうか。
お堂の北側と、仏塔の南側にある巨石を見てそう感じた。
お堂の北にある巨石
仏塔やお堂ができる以前、この山はどのようなものだったのだろう。
やがて、日が傾き始めようとしていた。山上は60人以上の人垣ができ、思い思いで眼下を眺めている。
夕暮れ時のルアン・パバーンの街を見渡すと、緑と川に囲まれた実に美しい街だとつくづく感じた。
帰りがけ、丘を下ったチケット売り場の隣にある巨樹が目に付いた。樹の下にはロウソクが灯され、何とも幻想的で美しい光景がそこにあった。
ラオスには、巨石・洞窟・岩・樹などのアニミズムへの信仰が息づいている。
バンコクにて 郡司 拝