2009/05/19

カンボジアの聖なる山に佇む巨石群

5月16日
トゥクトゥクをチャーターし、カンボジアの聖なる山プノンプーレン(プーレン山)に向かった。

シェムリアップの街から郊外へ行くと、長閑な田園風景が見えてきた。牛や水牛が畑で草を食み、農村の風景が広がっていた。椰子の並木道が木陰を作りなんとも心地よい。
一時間の快適な道は、やがて砂利道を30分ほど走るとプーレン山の入り口に到着した。

検問所で、朝方、シェムリアップのホテルで購入したプノンプーレン入場券(一人20$)を見せる。
ドライバーは、トゥクトゥクから荷台を外し、普通のバイクに戻した。ここから、さらに15kmの山道を3人乗りのバイクで向かうことにする。カンボジアでは、3人乗り4人乗りは当たり前だった。

山道の手前、巨石が見えてきた。この山には多くの巨石が点在しているようだ。





二つ目のカーブのところに、祠を祀った巨岩が現われた。祠を覗くと仏像らしきものが安置している。さらに、少し上った処にも同じように巨石の前に祠があった。興奮しながら、巨石に近づくと。いくつもの巨石が林立し岩屋になって大きな空間を作っていた。まるで沖縄のセイファー御嶽のように三角状の空間を作っていて、祭祀場のように思えた。岩屋の中に巨木が生えて、石と樹が一体となった聖地性を現し、所々に仏像が祀られていた。







バイクは、ゆっくりと山道を登ってゆく。途中、三つの巨石が重なった岩に出くわす。まるで人工的に造ったような不思議な造形だ。



バイクは40分ほどで、我々をプノンプーレン山上にある寺院に運んでくれた。参道にはお参りに必要なお香や花、お土産品、そしていくつかの食堂などがあった。



プノンプーレンはアンコール王朝創始の地で、802年ジャヤバルマン2世が神王として即位した聖なる山にある仏教寺院である。かつて、ここでは王と神が一体となる儀式を行った場所だという。もともとはヒンドゥー寺院だったが、今では上座仏教の聖地としカンボジア人の最も聖なる山として信仰されている。特にカンボジアの正月(4/13~16)には多くの人々がここを訪れ賑わうという。

ドライバーは、お寺に入るとまるでガイドのように寺院の中を案内してくれた。
我々は靴を脱ぎ、最初にプリア・アントンと呼ばれる涅槃仏をお参りすることにする。巨大な砂岩の岩の周りに作られた階段をゆっくりと上ってゆくと、岩上に屋根が付けられた中に全長9.5mの涅槃像が横たわっていた。
高さ20mはあろうかと思われる天然の巨大な一枚岩の岩上に彫られた涅槃仏の姿は、仏教への信仰の篤さを感じさせる。この涅槃仏は、16世紀にアンチャン1世が建造したものといわれている。涅槃仏の顔を見ると、目の瞳にガラス玉のようなものが入っていた。かつては、ここにダイヤモンドが納まっていたが、泥棒に取られて今はガラス玉だという。地元カンボジア人は、熱心に参拝して祈っていた。









その後、ドライバーは、寺院背後にある巨石を案内してくれた。まるでミニ88ヶ所巡りのように、小さな神像が巨石に安置されていて、巡拝するようになっている。面白いことに、胎内潜り、岩屋巡り、数々の巨石群など、まるで巨石のテーマパークのようだった。











これでもか、というくらいの多くの巨石を見ながら再び参道に戻ってきた。昼食は揚げたバナナ、蒸しご飯バナナにココナッツをいただく。

その後、少し下ったところにある川に向かう。この川はシェムリアップ川の源流で、沐浴するだけで身体が癒される聖なる川で、この川底にビシュヌ神とブラフマ神に彫刻や、多くのリンガが彫られたリンガ・ムイポアン(1000のリンガ)があった。中でも、最も大きなリンガは直径1mほどあった。リンガは川の流れと陰陽を象徴する形が実に美しく現われていた。何百年もの水の流れの中で岩はどのように浸食されてきたのだろう。





ドライバーが最後に連れて行ってくれたのは、山の中にある滝であった。
滝は上と下に分かれていてカンボジア人にとって憩いの場所になっていた。彼らは、滝の近くで食事をとり家族でゆっくりと過ごしていた。人々は、水と戯れながら暑さを涼んでいた。





プノンプーレンは、巨石と水が織り成す信仰と安らぎの聖山だった。

                    バンコクにて 郡司 拝