2009/08/20

アイルランド、タラの丘とニューグレンジ

  8月18日

 アイルランドの最終日、我々は首都ダブリンの北西約40km、ボイン川の屈曲部の渓谷にある古墳群を巡る一日ツアーに参加する。ツアーバスの乗ると、世界各国の人々が集まっていた。
 愛想のよいドライバーは、運転しながら観光ガイドを始める。一時間半ほどで、タラの丘に到着。
タラの丘は、ミース州ナヴァンの南12kmにある丘陵で、アイルランドに於ける伝説上の王たちの国が存在していた場所として知られている。丘の頂には、鉄器時代の要塞跡が残り、周囲の長さ約1000mの要塞は、「王の砦」と名づけられ、連結された円形の砦である。

ここは、古代アイルランド王を決めるための重要な聖地である。王座の中心部にはペニスを模したと思われる立石「運命の石」があり、王をこの石の前で王になる即位式が行われた。王が決まった時、この石は叫んだともいう。
近くの古墳の奥の石には、渦巻きが彫られていた。
また、ケルト人がアイルランドに移住した時代には、既にタラの丘は何らかの聖地として認識されていたと考えられている。
次にボイン川近くにあるニューグレンジへ向った。
ニューグレンジは、約5500年前に建造された新石器時代後期の巨大古墳で、ヨーロッパ最大の大きさを持つ。 石には渦巻き模様が刻まれ、一年に一度冬至の日だけ太陽の光が墓室に差し込むように設計されている。 それは、太陽の光が最も弱い日が、やがて復活してゆくための「死と再生」を暗示させるものだといわれる。
 15年ぶりにタラの丘とニューグレンジを訪ねたが、ここに来ると石が持つ古層なる世界と触れ合うことができる。立石、ケルト十字、渦巻き模様・・・。そこには、ケルト人や巨石文化を築いた古代の人々の「石の声」が今でも振動し続けているように思えてならない。
 帰りのバスの中で、あるオーストラリア人女性がマイクを持ち、アイリッシュ音楽を何曲か歌った。すると、まわりの人々も一緒になって口ずさんでいた。アイルランドの音楽は、世界中の人々を和ませる魔法があった。
                 ドイツ、デッセルドルフにて 郡司 拝