2010/01/13

フローレスの黒いキリスト祭りとティカル遺跡

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メキシコのパレンケからミニバスとボートを乗り継いでグアテマラに入国する。出入国手続きは特に問題なかった。

グアテマラで中型バスに乗り換え、でこぼこ道を3時間くらい走り10人くらいの旅行者とともに4時間あまりでフローレスに到着する。ここは、ペテン・イツァ湖と呼ばれる湖の中にある島で歩いて20分あまりで一周できるくらいの小島だ。島の形が5角形で、島内にはたくさんのホテルやレストランがあり、ティカル遺跡の観光の拠点である。

 湖の見えるホテルにチェックインして、島を歩くとどこからか賑やかな音が聞こえてきた。このフローレス島では、新年16日から15日まで間、黒いキリストの祭が行われていて、パレードや爆竹の音が島中に鳴り響いていた。島の真ん中の丘に立つ教会前の広場では、バレーボールやバスケットをする人々、その周りにはたくさんの屋台が立ち伝統的な食事を提供していた。

フローレスのカソリック教会には、黒いキリスト像が祀られている。



 夜のミサが終わると、人々は黒いキリスト像を手で触れていた。

午後8時を過ぎると、面白いパフォーマンスが始まる。牛をかたどった木のやぐらに爆竹、花火を仕掛け、教会前の広場で花火を打ち鳴らしながら練り歩く。

驚くことに、あちらこちらにロケット花火が飛び、子供から大人まで興奮しながら逃げまわるのだ。


祭りの間中、毎晩行うというのもすごい。面白い事に、人々は教会の柱に一列になりながら興奮しながら見ていた。



翌12日朝、4時起きで5時発ティカル遺跡行きのバスに乗る。1時間あまりでティカル遺跡に到着する。バスを降り、少し歩くと左手に池が見え、鏡のように写っていた。

ティカル遺跡は朝6時から入場でき、入場券(一人150Q)を購入してさっそく中に入る。遺跡はかなり広大なジャングルの中に点在していた。

最初に目指したのは最も高いⅣ号神殿と呼ばれる高さ70mあまりのピラミッドだ。夜明け後まもない薄暗いジャングルを歩き、ようやく4号神殿に近付くと、木製の階段が備え付けられていて神殿上部へと容易に上がることができた。眼下に広がるジャングルの海。そこに浮かぶように頭を出す神殿群。しばし、茫然としながらその神秘的な光景を見入ってしまう。



 グアテマラ北部、ペテン地方のジャングルの中にあるティカルは、マヤ最大の神殿都市遺跡で知られている。

16平方キロの空間に、3000近い大小の建築物が点在している。ティカルは、紀元後300年から800年頃にこの地域の一大宗教都市センターとして栄えた。しかし、10世紀に入ると、他のマヤ神殿都市と同様に衰退していったという。その理由は諸説あるものの謎だという。

17世紀末、スペイン人神父が道に迷い、何日も歩き続けてジャングルに覆われた巨大ピラミッドを発見したのがこのティカル遺跡群であった。

ティカル遺跡は、高さ20mから30mもの木々に覆われたジャン中に点々としているため、歩いているとまるでジャングルの中にさ迷っているような錯覚になってしまう。途中、ハナグマを見かけたり、猿や鳥など様々な小動物と出くわす。

サウス・アクロポリスの東側にあるⅤ号神殿は、高さ57mあり、ティカルで二番目に高い。

神殿を見て左手に急な階段を一気に上り、下を見るとその高さから足元がすくんでしまうくらいの恐さがあった。

上からの眺めは、すばらしい。

 グラン・プラザという広場は、ティカル遺跡群の中心的な施設が集まっている場所で、Ⅰ号神殿は高さ51mで復元された神殿の中で最も美しいといわれる。

神殿上部に巨大なジャガーの彫刻が発見されたことから「大ジャガーの神殿」とも呼ばれる。また、Ⅱ号神殿は、高さ3mで三層からなる台座があり飾り屋根の顔の浮き彫りから「仮面の神殿」とも呼ばれる。



ノース・アクロポリスの神殿には巨大なレリーフがあった。

ティカルのピラミッド(神殿)を巡っていると、もともとあった山を生かしてピラミッドを造っているケースが以外と多いことが分かる。

最後にグループGと呼ばれる遺跡を巡る。遺跡の入口にある直角に曲がった石のトンネルを潜ると、中庭のような場所にでた。



そこは、まるで時間が止まっているような不思議な感覚になった。

ティカル遺跡は、ある意味、時間を越えて存在しつづけている。

   グアテマラ、フローレスにて

                        須田郡司 拝