2009/07/21

マルタの女


初めて地中海に浮かぶマルタ共和国を訪れた。淡路島の3分の2にも満たないマルタには、先史時代に造られた遺跡が30以上もあり、エジプトのピラミッド建造より古い時代の紀元前3000~2500年頃に造られた巨石神殿があることで知られていた。
シシリア島からマルタ行きのフェリーで夕刻ヴァレッタに到着し、翌日、巨石神殿へ向かった。

7月18日
ヴァレッタのバスターミナルからバスで約10分、ドライバーはここから歩いてタルシーン神殿に行けると教えてくれた。バスから降り、散歩をしている老人にタルシーン神殿の行き先を聞くと、親切にも近くまで案内してくれた。どこから来たと聞かれ、日本と答えると、「日本の美しい風景は、テレビで見て知っている」と話す。

タルシーン神殿は街中にあった。中に入ると、白い石がごろごろとしていて、まるで廃墟跡のようだ。少し歩くと、巨石神殿の石組みが現れた。
テーブル状の石門を潜ると、そこには女性の下半身像があった。
体格がよくスカートらしきものをはいている。その近くの祭壇と思しき石には、渦巻きを現す文様が彫られてあった。

また、巨石神殿には穴の空いた石や動物が画かれた石などがあり、いったい何のために使われたのだろう。

しばらく神殿の中を歩いていると団体の見学者がやってきた。ドイツ語、フランス語のガイドツアーだ。マルタは、ヨーロッパ人にとって人気のスポットのようだ。

周囲は壁で囲われているが、渦巻きの装飾をしたドアがあり、これは巨石神殿の中の文様を現しているのだろう。

その後、ヴァレッタにあるマルタ考古学博物館へ行く。入口に展示されていた渦巻き文様は、どこかケルト文様を連想させた。
ここには、マルタの多くの巨石神殿遺跡から発掘された本物の遺物が展示してあった。

奥の部屋に入って驚いた。そこには、丸々とした豊満な身体、二の腕に豊かな腰回りで櫻島大根のような太い足のマルタの女がずらりと展示されているではないか。
ただ、首の無いものがほとんどだ。
マルタの女とは大地母神を象徴する女神像のことである。
これら女神像は、豊穣と繁栄の祈りの形を表現しているように思えた。
特にハイポジウムで発見された「眠れる女神像」は、不思議な魅力があった。
手のひらに乗る小さな眠れる女神像は、何を象徴しているのだろう。じっくりと眺めているとマルタ人女性が次第に女神に見えてきた・・・。
            イタリア、シシリアにて 郡司 拝