バスは急カーブの坂道を上りはじめると、シチリア州の州都パレルモの街が見えてきた。
ここには、パレルモの守護聖人ロザリアが遁世した洞穴教会がある。
バスが教会の前に着くと、そこには多くのお土産屋からカフェがあり、かなりの観光地であることに驚く。
そそりたつ岩場にクリーム色の建物が食い込んでいる。中に入り石のタイルを歩くと奥に洞穴の入口があった。
洞穴の天井には、あちこちにブリキの板が見える。
それは、天井から滴り落ちる水を集めるためのもので、水は石の桶に貯まっていた。石桶をじっと見ていると、時折、ポタッと水が落ちる。聖なる水だ。
しばらくして、ミサが行われた。30人もの人々が神父の話に耳を傾けていた。
聖ロザリアとは、伝説によれば1130年にカール大帝の末裔のノルマン貴族の家系に生まれ、信仰も篤くベッレグリーノ山の洞窟で隠遁して暮らし、1186年年に亡くなったとされる。
1624年、パレルモにペストが流行した時、病気の女性の前にロザリアが出現し、猟師の前に出現した時、彼女は自分の遺骨の在り処を示し、行列を作って町に進み彼女の遺骨をパレルモまで運ぶように命じたという。
それによって猛威を振るっていたペストがぴたりと治まったという。その翌年、洞穴の教会が創建された。
パレルモでは7月15日、フェスティーノと呼ばれる聖ロザリアを祝福するお祭りがある。遺骨を乗せた山車でパレルモを行進するのだ。
洞穴の入口にドクロを持った女性像がある。これは、聖ロザリアを象徴しているように見えた。